最初につくったのは二○一六年の秋冬でした。

ヘムレンシャツとヘムレンシャツワンピース。

  

生地はずっと同じ。 

都内で鉄釜を使って少しづつゆっくり時間をかけて染めていく方法で、オリジナルカラーの生地をつくってみませんか。

と、提案してくださったのはもう五、六年前。

  

モワッと蒸気で満たされた工場には、

十数人のおじさんたち(中には若い人もいるんだろうけれど)が、

汗をかきながら黙々と自分の作業をしていて、

大きな機会の音がそこら中で常にしているので、

あまりお喋りも聞こえず緊張感のある空気が流れていました。

  

様々な生地や服を、

様々な調合で微妙な色に染めていく、

おじさん。

クールですよね。

反ごとに色は異なるし、一反の中で色のムラは出来ます。

生地がピッとしていなくて裁断しにくいとも言われるし、時間もかかります。

もしこの服をお持ちだったら、

よく見ていただけると場所で微妙に色が違うと思います。

そういう安定しない、完璧でない生地だから、

今も使えているのかも。

  

今季は”記憶”がヒントなので、

パッと思い浮かぶ色をつくりました。

南の方へ旅行に行った時に見た、薄く、でも強いレモンの黄色。

初夏のポルトガルで見た街路樹の花の鮮やかなパープル。

美しく、少し不穏で静かな夜明け前の深い青。

こちらの三色から、新しい季節を始めたいと思います。

かたちの話は、また。