これまでの日常が揺らぎ立ちすくむ日々の中で
見つめたのは記憶でした。
”記憶”つまり過去に覚えた様々な感情や言葉や見聞きした事柄は
自身の中にある 小さな引き出しが沢山ついたタンスに一つ一つ仕舞われていて
必要な時には把手を引いて出してきて組み合わせたりしながら姿を表します。
”これは去年の夏に海沿いの街で見た鮮やかな花の色に似ている”
”古い修道院で出会った女性の笑顔のように静かで柔らかい印象”
“子供の頃に連れて行かれた何かの集会での仄暗い電灯の色”といった感じに。
価値観が大きく動いている今
服として何をこれから提案していけるのか模索し
これまでの記憶を消滅させることなく
たぐり寄せることにしました。
記憶をなくしては何も想像できないから。
何年も前に読んだ 小川洋子の著書 密やかな結晶 のイメージの記憶をヒントに
不確実で不均衡な流体の日々に起こる曖昧な気分を思い出して組み合わせて
のんびりとリラックスしてポジティブな気分の服をつくりました。